○美祢市議会基本条例
平成23年3月24日
条例第12号
前文
美祢地域は、日本一のカルスト台地秋吉台を有し、石灰石や無煙炭などの地下資源に恵まれ、古代より美祢郡域としてまとまった圏域を形成してきた。
平成20年3月21日に美祢地域の美祢市、美東町、秋芳町の1市2町が合併し、新しい美祢市が誕生したが、広い市域の市民の一体感醸成、過疎と少子高齢化への対応、さらには、産業・観光振興を核とした交流拠点都市のまちづくりが重要な行政課題となっている。
一方、平成12年の地方分権一括法の施行以降、二元代表制の一翼を担う機関として、地方分権の進行とともに議会の果たす役割、とりわけ団体意思の決定機関としての機能や執行機関を監視・評価する機能、さらには行政課題や住民の多様な声を政治に反映させる政策立案能力の向上が求められている。また、議会運営や議員定数・報酬についても市民の声をしっかり受け止める必要があり、美祢市議会(以下「議会」という。)も合併時の議員定数26人を次回の選挙から19人に削減し、より市民の期待に応えるよう努力しているところである。
議会は、これらの時代の要請に応えるよう議員自らが意識改革に努めるとともに議会改革についても鋭意努力することを確認し、議員研修会や先進地の視察等を重ねてきた。
ついては、市民の声を市政に反映していくことを第一の基本とし、開かれた議会を目指し、議会中継や議員が地域に出向く議会報告会の実施、議会広報の作成などに取り組み、さらに議会の透明化及び政策立案能力・審議能力向上に向けて新たな決意をし、議会改革を推進するために議会基本条例を制定するものである。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、議会及び議員活動に必要な議会運営の基本事項を定めることにより、議会が市民の負託に応え、市政の情報公開と市民参加を基本とし、市民の幸せと豊かなまちづくりの実現に寄与することを目的とする。
第2章 議会及び議員の活動原則
(議会の活動原則)
第2条 議会は、次に掲げる原則に基づき活動を行わなければならない。
(1) 公平性及び透明性を確保し、市民に開かれた議会を目指すこと。
(2) 市民の多様な意見を的確に把握し、政策立案、政策提言等の強化により、市政に反映させるための運営に努めること。
(3) 議会運営は、市民傍聴の意欲が高まるよう、分かりやすい言葉を用いた説明及び広報に努めること。
(4) 議会内での申し合わせ事項は、必要に応じ見直しを行うこと。
(議員の活動原則)
第3条 議員は、次に掲げる原則に基づき活動を行わなければならない。
(1) 議会が言論の府であること及び合議制の機関であることを十分に認識し、議員相互間の自由な討議の推進をすることを重んじること。
(2) 市政の課題全般について、市民の意見を的確に把握するとともに、自己の能力を高める不断の研さんによって、市民の代表としてふさわしい活動をすること。
(3) 議会の構成員として、一部団体又は地域の代表にとらわれず、市民全体の福利の向上を目指して活動すること。
(会派)
第4条 議員は、議会活動を行うため会派を結成することができる。
2 会派は、政策を中心とした同一の理念を共有する2人以上の議員で構成し、活動する。ただし、党籍を持って選出された議員は、この限りでない。
3 会派は、議会運営、政策立案等に関し、必要に応じて会派間で調整を行い、合意形成に努めるものとする。
第3章 市民と議会の関係
(市民参加及び市民との連携)
第5条 議会は、市民に対し積極的にその有する情報を発信し、説明責任を十分果たさなければならない。
2 議会は、本会議のほか、全ての会議を原則公開とする。
3 議会は、地方自治法(昭和22年法律第67号。以下「法」という。)第100条の2の規定による専門的知見の活用及び法第115条の2第1項及び第2項の規定による公聴会制度及び参考人制度並びに常任委員会、議会運営委員会及び特別委員会(以下「委員会」という。)にあっては、法第109条第5項において準用する法第115条の2第1項及び第2項の規定による公聴会制度及び参考人制度を十分に活用して、市民の専門的又は政策的識見等を議会の討議に反映させるよう努めるものとする。
4 議会は、市民との意見交換の場を多様に設け、議員の政策立案能力を強化するとともに、政策提案の拡大を図るものとする。
(議会報告会等)
第6条 議会は、市政の諸課題に柔軟に対処するため、市政全般にわたって、議員及び市民が自由に情報及び意見を交換する議会報告会及び意見交換会(以下「議会報告会等」という。)を行うものとする。
2 議会報告会等に関することは、別に定める。
第4章 議会と行政の関係
(議員と市長等の関係)
第7条 議会審議における議員と市長その他の執行機関及びその補助職員(以下「市長等」という。)との関係は、次に掲げるところにより、緊張関係の保持に努めなければならない。
(1) 本会議における議員と市長等の質疑応答は、広く市政上の論点及び争点を明確にするため、一問一答の方式で行うことができる。
(2) 議長から本会議又は委員会への出席を要請された市長等は、議長又は委員長の許可を得て、議員の質問に対して反問することができる。
(3) 議員は、会期中又は閉会中にかかわらず、議長を経由して市長等に対し資料請求を行うことができる。この場合において、市長等に文書により回答を求めるものとする。
(議会審議における論点情報の形成)
第8条 議会は、市長が提案する重要な政策について、その政策水準を高めることに資するため、市長に対し、次に掲げる事項について明らかにするよう求めるものとする。
(1) 政策の発生源
(2) 提案に至るまでの経緯
(3) 他の自治体の類似する政策との比較検討
(4) 市民参加の実施の有無とその内容
(5) 総合計画との整合性
(6) 財源措置
(7) 将来にわたるコスト計算
2 議会は、前項の政策の提案を審議するに当たっては、それらの政策の水準を高める観点から、立案、執行における論点及び争点を明らかにするとともに、執行後における政策評価に資する審議に努めるものとする。
(予算及び決算における政策説明)
第9条 議会は、予算及び決算の審議に当たっては、前条の規定に準じて、分かりやすい施策別又は事業別の説明を市長に求めるものとする。
第5章 自由討議の保障
(議会の合意形成)
第10条 議会は、言論の府であることを十分に認識し、議員相互間の自由討議を中心に運営しなければならない。
2 議会は、本会議及び委員会において、議員、委員会及び市長提出議案並びに市民提案、直接請求による議案、請願、陳情に関して審議し結論を出す場合、議員相互間の議論を尽くして合意形成に努めるものとする。
(政策討論会)
第11条 市政に関する重要な政策及び課題に対して、議会としての共通認識の醸成を図り、合意形成を図るための政策討論会を行うものとする。
2 政策討論会に関することは、別に定める。
第6章 委員会の活動
第12条 委員会審査に当たっては、資料等を積極的に情報公開しながら市民に対し、分かりやすい議論を行うよう努めなければならない。
2 委員長は委員会の秩序保持に努め、委員長報告を自ら作成するとともに、質疑に対する答弁も責任をもって行わなければならない。
第7章 政務活動費
(政務活動費の執行及び公開)
第13条 会派又は議員は、調査研究その他の活動に資するために交付される政務活動費について、その適正な執行に努めるとともに、市民に対して使途の説明責任を負うものとする。
2 政務活動費については、別に定める美祢市議会政務活動費の交付に関する条例(平成20年美祢市条例第5号)によるものとする。
第8章 議会及び議会事務局の体制整備
(議員研修の充実強化)
第14条 議会は、議員の政策形成及び立案能力の向上等を図るため、議員研修の充実強化を図るものとする。
2 議会は、議員研修の充実強化に当たり、広く各分野の専門家、市民等との議員研修会を年1回以上開催するものとする。
(議会事務局の体制整備)
第15条 議長は、議員の政策形成及び立案を補助する組織として、議会事務局の調査・法務機能の充実強化を図るよう努めるものとする。
(議会図書室の利用)
第16条 議長は、図書の購入等、議会図書室の充実を図るように努めるものとする。
(議会広報の充実)
第17条 議会は、市政に係る重要な情報を、議会独自の視点から常に市民に対して周知するよう努めるものとする。
2 議会は、情報技術の発達を踏まえた多様な広報手段を活用することにより、多くの市民が議会と市政に関心を持つよう議会広報活動に努めるものとする。
第9章 議員の政治倫理、身分及び待遇
(議員の政治倫理)
第18条 議員は、市民全体の代表者としてその倫理性を常に自覚し、自己の地位に基づく影響力を不正に行使することによって、市民の疑惑を招くことのないよう行動しなければならない。
2 政治倫理については、別に定める美祢市議会議員の政治倫理に関する条例(平成28年美祢市条例第27号)によるものとする。
(議員定数)
第19条 議員定数の改正に当たっては、行財政改革の視点だけではなく、市政の現状と課題、将来の予測と展望を十分に考慮するものとする。
2 議員定数の基準は、人口、面積、財政力及び市の事業課題並びに類似市の議員定数と比較検討し、決定するものとする。
3 議員定数の条例改正議案は、市民の直接請求による場合及び市長が提出する場合を除き、議員定数の基準等の明確な改正理由を付して、法第109条第6項又は第112条第1項の規定に基づき、委員会又は議員から提出するものとする。
(議員報酬)
第20条 議員報酬の改正に当たって、議員が提案する場合は、市民の客観的な意見を参考に決定するものとする。
2 議員報酬の条例改正議案は、市民の直接請求による場合及び市長が提出する場合を除き、明確な改正理由の説明を付して、法第109条第6項又は第112条第1項の規定に基づき、委員会又は議員から提出するものとする。
第10章 最高規範性と見直し手続
(最高規範性)
第21条 この条例は、議会における最高規範であって、議会は、この条例の趣旨に反する議会の条例、規則等を制定してはならない。
2 議会は、議員にこの条例の理念を浸透させるため、一般選挙を経た任期開始後速やかに、この条例の研修を行わなければならない。
(見直し手続)
第22条 議会は、一般選挙を経た任期開始後、できるだけ速やかにこの条例の目的が達成されているかどうかを議会運営委員会において検討するものとする。
2 議会は、前項の規定による検討の結果に基づいて、この条例の改正を含む適切な措置を講じるものとする。
3 議会は、この条例を改正する場合には、全議員の賛同する改正案であっても、本会議において、改正の理由及び背景を詳しく説明しなければならない。
附則
この条例は、平成23年3月24日から施行する。
附則(平成25年条例第2号)
この条例は、平成25年3月1日から施行する。
附則(平成27年条例第26号)
この条例は、平成27年4月1日から施行する。
附則(平成28年条例第27号)抄
(施行期日)
1 この条例は、公布の日から施行する。
附則(令和2年条例第18号)
この条例は、公布の日から施行する。