山口県美祢市産の国内初産出のディキノドン類化石について

更新日:2020年10月01日

東アジア初の上部三畳系からの化石記録

 2010年5月3日、山口県美祢市の化石採集場において陸生動物の歯と思われる化石が採集されました。美祢市は専門家にこの化石の研究を依頼したところ、この化石は国内では初産出、また東アジア上部三畳系から初産出となるディキノドン類化石であることが明らかになりました。

1.産地と地層

 山口県美祢市大嶺町奥畑 美祢市化石採集場
美祢層群桃ノ木層(中生代三畳紀後期 約2億3000万年前)

美祢市化石採集場の地層の写真

美祢市化石採集場

地質時代と美祢層群の位置
美祢層群分布域とディキノドン産出地

2.ディキノドン類について

 ディキノドン類は、四肢動物―単弓類―獣弓類に属し、古生代ペルム紀に出現しました。その後古生代末に起こった陸上生物の7割、海洋生物の9割が絶滅したともいわれる史上最大の絶滅事変を生き延びた後、中生代前期~中期に汎世界的に分布するほど繁栄し、中生代三畳紀後期に衰退した植物食動物で、現在まで約70種程度が知られています。

 また、ディキノドン類の化石は世界中から産出しています。このことからある種類のディキノドン類は中生代三畳紀当時、世界中の大陸がひとつであった超大陸“パンゲア”存在の証拠のひとつとされています。

時代と分布地

3.分類上の位置

 ディキノドン類を含む非哺乳類単弓類は、従来“哺乳類型爬虫類”のように爬虫類の仲間として扱われることもありましたが、現在では爬虫類を含む竜弓類系統とは早い段階で別れた別系統であることを重視して、そのような呼ばれ方はしなくなっています。また、哺乳類も単弓類の一員であることから、ディキノドン類は哺乳類の少し遠い親戚と言っても良いかもしれません。

系統樹

4.ディキノドンの特徴

 ディキノドン類の特徴は頭骨にもっともよく表れています。最大の特徴は上顎から左右1対の犬歯状の歯(タスク)が突出していることであり、“ディキノドン”という名称は“ふたつの犬歯”に由来しています。

3.産出ディキノドン類化石の特徴

 今回発見された標本は2点あります。1点は右上顎の一部で、もう1点はタスク(犬歯状の歯)を伴う左(?)上顎の一部です。
 右上顎標本には母岩にタスクの印象が残されていたので、歯科用の樹脂で型をとって、タスクの一部を復元しています。
 右上顎標本は上顎骨の一部だけが保存されています。上顎骨はタスク周辺で外側へ膨らんでいます。後面は平坦で上部に頬骨弓の前端部と思われる長楕円形の破断面が見られます。前方上部はやや窪んでいます。印象から復元したタスクは断面が円形に近いと考えられ、やや後方へ湾曲しています。タスクの歯冠部は少なくとも3 センチメートルほどあり、根元部分の前後径が1.7 センチメートル程度です。
 左上顎標本には骨が保存されていますが、保存状態は悪く、また潰れて変形しています。そのため未だ骨要素の確実な同定には至っておらず、左右も現在のところ確実ではありません。骨の形状とタスクとの位置関係から、骨は眼窩周辺のものであると考えています。タスクの上後方には楕円形に近い骨の破断面があり、これは右上顎標本にも見られた頬骨弓の前部であると考えられます。タスクは眼窩前下部にあります。破損した歯根部が露出しており、その先端は眼窩前方直下付近にまで達しているようです。タスクの歯冠部はやや破損しているものの先端部を除いて保存されています。断面は円形に近く、残されている部分の歯冠高が3 センチメートル程度で、形態・大きさは右上顎標本のものとほぼ変わりません。
 太い犬歯状の歯をもつこと、その歯根が眼窩近くまで達すること、上顎骨がタスク部で外側へ膨らむこと、上顎骨がタスク後方で平坦な面をもつことといった特徴がディキノドン類のものと一致しているため、標本はディキノドン類のものであると考えています。

タスクを伴う左上顎の一部の写真
右上顎の一部の写真

5.美祢市産ディキノドン類化石の意義

 ディキノドン類は汎世界的に分布を広げた獣弓類で、古生代末から中生代初期の陸上脊椎動物の進化を考える上で重要なグループです。

 アジアでは中国やラオスで後期ペルム紀から三畳紀のディキノドン類の化石記録が知られていますが、中国の化石記録は中期三畳紀のものまでで、東アジアでは後期三畳紀のディキノドン類は知られていませんでした。今回美祢層群から見つかった化石は、後期三畳紀のこの地域にもディキノドン類がいたことを示すものであり、衰退期のディキノドン類が世界中にどのように分布していたのかを知るための重要な手がかりとなります。

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